秋田県 自販機のうどんそば

出典:道の駅あきた港 SELION(セリオン)

秋田のソウルフード『自販機のうどん・そば』

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秋田、佐原商店の『自販機のうどん・そば』

秋田港近くにあった小さな商店『佐原商店』。
秋田港に入港する船の船員達に、食料や日用品等を販売していた。

NHK『ドキュメント72時間』でも放送されたが、この佐原商店に設置されていたのが、一杯200円の『うどんとそばの自動販売機』だ。

現在は、道の駅あきた港 SELION(セリオン)に移設され、2016年9月より一杯250円で販売されている。(詳しくは後述)

ドキュメント72時間『秋田・真冬の自販機の前で』

佐原商店にうどん・そばの自販機が設置されたのは約40年前。当時から人気があったという。

老朽化で故障も多く、既に生産中止となっている自販機だが、そんな自販機のうどん・そば(正確には天ぷらうどんと天ぷらそば)を求めて、今でも多くの人々がやってくる。24時間開いている便利なコンビニ等が多数あるにも関わらず。

自販機から出てくるうどん・そばには、『つゆ』がなみなみに溢れるほど入っている。この『つゆ』が美味いという。

営業のビジネスマンやドライバー達が、朝・昼・晩と時間帯を問わず訪れる。
夜中に来る客も多く、また、若い頃から友人や仲間と一緒に食べていて、20年、30年通っている地元秋田市民も多いというソウルフードぷりだ。

『ドキュメント72時間』では、グループで来ていた親子連れが、この自販機のうどんやそばを食べながら、
『若い頃、行く場所がないときは、いつもここで過ごした。…(詳しくは後述)…何かにぶち当たったらここに来なさい。ここにいれば、みんな見つけてくれる』
と、ここをまるで『帰る場所』のように、息子に教える母親の姿が非常に印象深かった。

廃業による自販機の撤去

『ドキュメント72時間』での放送後、全国からも多くの人が訪れ、行列ができる程に。

オヤジさん(社長)は、『お客さんに喜んでもらえるなら一番いいなあ』と、足に持病がありながらも、うどん・そば用のネギを毎日20本きざむ。
自販機よりも、オヤジさんの体を気遣うお客もいるという。

しかし、今年2016年3月、売上も減り後継者もいないため、オヤジさんは廃業を決めた。自販機も撤去されることに。

廃業を決めたオヤジさんの一言は、
『時の流れだ、やっぱり』

角に立っている自動販売機が『うどん・そばの自販機』
右奥のテーブル・ベンチに座って食べる客も多い。テーブルの上からぶら下がっているのが瓶に入った七味。

このグーグルストリートビューも、そのうち変わってしまいますよね…
寂しい限りです。

自販機の現在〜道の駅あきた港SELIONに移設

その後、産経ニュースによると、オヤジさん曰く

閉店が報道されて以降、自販機を譲ってほしいという依頼が全国から約30件あったが、「秋田港のにぎわい創出のため、道の駅あきた港にお願いした」という。

自販機は現在、同じ秋田港にある『道の駅あきた港 SELION(セリオン)』に設置されている。

場所も営業時間も価格も変わったが、佐原商店にあったテーブルと椅子も移し、ある意味名物だった、七味が入った瓶もぶら下げられている。

テレビでたまに見る、賑わった商店街。
恐らくそのほとんどは、首都圏や大都市周辺の、ごく一部の商店街であろう。
全国ほとんどの商店街は、人口減少・自動車社会・大型店舗の進出等により、今やシャッター商店街・シャッター通りとなっているのが現状だ。

便利な世の中になったとは思うが、それと同時に失うものも少なからずある。昔からその地元に根付いてきたソウルフードもしかりだ。そのあおりをくらい、消えていくものも多々あるだろう。

廃業を決めたオヤジさんの一言、『時の流れだ、やっぱり』が心に響きます。

そのような中、秋田の自販機が残されたことは、非常に珍しいケースだと思います。確かに場所と営業時間等は昔とは異なりますが、それでも地元住民にとっては嬉しい限りのはず。

再びあの自販機のうどんやそばを食べながら、昔を懐かしむこともできます。
もしかすると、今の場所で昔を懐かしむような会話をしながら、親子一緒に食べる自販機のうどんやそばが、今度はその子供達にとってのソウルフードになっていくかもしれませんしね。

ドキュメント72時間のインタビュー内容(ネタバレあり)

通常のドキュメント72時間『秋田・真冬の自販機の前で』を放送後、佐原商店の廃業が決まり、その後『惜別編』が放送されました。(惜別編は通常のものをベースに編集・廃業決定後の内容を追加していると思われます。)

インタビューの一部をざっくりと簡単にまとめました。

  • ・『つゆがうまく、また、冬の時期、道が凍結して車で移動するにも時間がかかるため、手っ取り早く食べれるからいい』という男性客。
  • ・1人になりたいときにやってくる男性客は『安くて手軽で、この自販機の温かいそばを食べると、心も温まれる』という。
  • ・その日が誕生日という78歳のお父さんは、13年前に妻を亡くしてからほぼ毎日食べにくるという。
  • ・吹雪の中、外でうどんをすするトラック運転手の父親とその息子。週末は思い出づくりで色々なところへ連れ出すという。
  • ・若いころ友達等とよく食べに来て、年をとってからも、たまに無性に食べたくなり1人でやってくるという男性客は、昔を思い出しながら食べる。1人だけど1人じゃない気がする不思議な自販機だという。男性は、最近、癌を宣告されたという。
  • ・給料日前で、財布の中が寂しい時にやってくる客。
  • ・『若い頃、行く場所がないときは、いつもここで過ごした。200円あれば温かいうどんが食べれて、屋根があって、港が見えて、イスがあって。何かにぶち当たったらここに来なさい。いつか、そういう時にぶち当たることがあるから、きっと。でも、ここにいれば、みんな見つけてくれる』と息子に教える母親。

『惜別編』で追加

  • ・上述の廃業を決めたオヤジさんの一言等が追加
  • ・約1年ぶりに、上述の癌と戦っていた男性客とスタッフが再会。男性は『前に会った時は、1年先自分は生きているかどうか分からなかった。またこうやってお会いできるなんて夢のようですね。』と元気な様子で話す。
  • ・佐原商店の自販機最後のお客は、幼稚園の頃から通っているという男性客だった。

この放送を通して見えた様々な人生から、ソウルフードが持つ何か本質的な『力』のようなものを改めて感じました。

私達は『昔から食べている・いつも食べていて好きだから、美味しいから』等の単純な理由で、『○○(自分も含めて)にとってのソウルフードとは~だ』と、普段は何気に言っているような気がします。

でも少し大げさに言うと、そのソウルフードには、人々の心を癒す『力』があり、さらには仲間やコミュニケーションという、人と人とを繋ぎ止める『力』さえあるように感じます。

私達は、その『力』のようなものを何気に・潜在的に感じているところから、それをソフルフードとして認めているのかもしれません。

※『自販機のうどん・そば』の詳細については、写真も充実している下記のページも非常に分かりやすいです。オヤジさんの人柄が出ている張り紙『俺のひとり言』写真には、思わず涙が出そうになりました。

http://halaioru.com/odekake/udonsobajihanki.html

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